だいぶエントリーがおざなりになってきたのでちょっと本腰を入れてみようと思っていたらクリスマス・・・。聖夜である。そんな日に僕はある面白い(英語でいうなれば、"funny"ではなくて"interesting"のほうである)話を聞いた。ちょっと切ない話であるけども・・・。
酒の回りもあっても、商社の人は「Aが(その夜は)ひたすら静かな聞き役に徹してくれた」ことに偉く感謝し、鬱憤がたまっているだろうと(勝手に)察してキャバクラへ繰り出した。ところが、Aは下戸である。ビールもジョッキ1杯あけるのがやっとなくらいだった・・・。「そんな飲めないんで・・・。」と億劫になっていたが、「まぁ僕が知っている店で接待でも使えるから」という一言に「まぁ社会勉強ってことで」と2人は2軒目へ向かった。
場末って言えば場末の街であるけれども、ハコにいる綺麗な女性も多く、木曜日のせいかまずまずの入りだった。商社の人が言うには、「ここの店、この辺りじゃ結構まともなんだよ。若い子も多いじゃん、見たとおりだけどさ。」
「そうですねぇ。」と答えながらAは「この人、僕の1つ上なのに発言がおっさん・・・。」と同時に思った。
「こんにちは~。」って脇から女の子が2人来た。Aの脇には、愛美という20くらいの子が座った。Aは「あちゃ~」と表情には出さないけど心の中では思った。めちゃめちゃ嫌いなタイプだった。色黒、言葉が5年位前のギャル系チックだったのだ。脇をチラッと見る・・・と商社の人は、早くも彼の脇についた女の子と既に2人の世界に入ってしまっていた。
溜息・・・。
Aは観念してその子と話し出した。どうもぱっと見の第一印象で嫌いというにはせっかち過ぎたのかもしれない。この愛美という子は非常に他人の懐に飛び込める度胸があった。そのためにAはA自身の判断にちょっと後悔。アルコール耐性が大して高くないにも関わらずAは水割りを彼の中ではかなりハイペースに飲んでいた。ただ自身が下戸であるのは強く自覚していたので記憶を飛ばしたりするような他人に迷惑をかけるまねはしない程度にセーブしていた。でも脇にいる愛美とのトークは楽しんでいた。。Aは自身で「しゃべり下手」とは言うものの軌道に乗れば「下手」と自称するのが可笑しなくらいだ。Aに恋人の有無を聞いたり、25歳って結婚の第一のピークだとか、好きなアーティストの話、最近ハマっているドラマの話、しかも好きなライターも一緒だった、要するに妙にウマが合った。・・・時間が来た。何事もうま~く行っているときに残酷にも時間が来てしまう。別れ際に二人は携帯のメアドを交換して別れた。Aが楽しめて、商社の人も自身が楽しめたし、安心して二人は別れた。
Aは帰りの電車でメールを確認。その愛美からだった。シンプルではあったけれども、愛美自身もAと話せて楽しかったこと、「また来てね~」というその業界ではお約束の一言も添えられていた。Aは、「営業って大変なんだろうねぇ。」としみじみ感じながらも自ら行くタイプでないからそのまま返事もメールせずに携帯電話をしまった。その時はこれっきりになるだろう・・・としていた。
その翌週の火曜日、Aは思いもよらぬメールを受け取った。愛美からだった。
「愛美だよ~。今はなにしてるの???」・・・Aは「火曜だし、飲めないから行こうとも思わないけどなぁ。」と思いながらも営業帰りの電車が来るまで時間があった上に、今朝の通勤途中で読んでいた文庫本を読みきったからヒマを持て余していた。「今仕事の帰りで電車待ち。今日はいけないよ。」とさっさとやり取りを切る為につっけんどんな返事を送信。1分もしないうちに「今日は仕事休みなんだ~。今お店の女の子と二人で飲んでるんだ。一緒にどう?」あっけに取られたA。思わぬ切り返しだった。電車が来るまでにまだ15分くらいあった。「どこで飲んでいるの?」Aは行く気ゼロだったけれども暇つぶしに返信。「大船。」とシンプル。Aは返答を見た瞬間に論外だと思ったが、「いつどこで世話になるかわからない」と思って、「今日は行くのはしんどいや。ごめんね。」と終わらせるつもりで返信・・・。数分経っても特にこれ以上返してこなかったので気にも留めず、電車に乗り込み、うつらうつらし出すと・・・「Aの声を聞きたい。電話したらダメ?」と。Aは携帯のメアドに自分の電話番号を入れていたことに後悔した。「ごめん・・・今から1時間から2時間くらい電車に乗ってるから」と返して眠りに入った。その後、電車を乗り継いで家のそばの駅に着いた。暖冬だからとコートを着ていなかったAも寒さを感じた。見知らぬ番号からの着信。「もしもし」・・・愛美だった。「声をどうしても聞きたいから」、「あ、ごめん。電池が切れそうだから」と返す。ちょっと寂しそうに「16日夜空いてない?」、店に指名して来てくれと言われたらイヤだなぁと思いながらも「空いてるけど、何か?」と返した。「飲みに行かない?」、「全くのプライベート?」、「もちろん。」・・・ここで電池が切れてしまった。Aはしまったと思いながら小走りに家路に向かった。携帯電話の充電器に急いでつないで電源を入れたらメールが愛美から来ていた。「バカ!返事待ってます。」、「バカって言われる筋合いかよ!」とたまたまTVに映っていた三村マサカズをみながら思った。Aはそのとき彼女がいなかったので、「イブに男友達と過ごすのもなぁ」と見栄を張ってみたり。空しくなってきたので、「全くのプライベートでなら構わないよ。あとイブはどーなの?」と返した。早い早い。「わーい。イブはまだわかんないや。仕事かもしれない。」こういう返事を貰って「ちょっと期待しないほうがいいかもな。」と変な期待は持たないでおこうと決意して寝た。
その木曜日がやってきた。Aは普通に会社から出て、待ち合わせの六本木のABCに向かった。愛美はやっぱりギャルっぽい格好だった。
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